■デジタル化によるマンガ制作スタイルの進化■
「PCの高性能化とブロードバンドの普及によって、漫画制作はより分業化が加速しました。
デジタル化の長所ばかりを述べてきましたが、デジタル化によるデメリットもあるからです。
作家性や修練ではない技術部分…アプリケーションの進化による効率化は、言い換えれば作家やアシスタントに絶えず勉強を強要するものです。
全部を独学で身に付けるなら漫画制作にかける時間は短くなりますし、新しい技術を覚えなければ効率はあがりません。
例えば劇画系の漫画家やアシスタントが必須だったパース…3点パースやライトボックスを使用した写真トレスは、デジタルにおいては最終的な画面さえイメージを持っていれば不要の技術になっています。
パースは3Dを使えば良いですし、写真はほとんど自動で写真トレスをする機能…2DLTがComicStudioに実装されています。正しい使い方で運用すれば手で描いていた時の何倍も効率的です。
(ただし写真トレスはデジカメの撮影さえできればComicStudio上で加工できますが、3Dの場合はComicStudio上ではモデルを作る事ができません。)
デジコミ制作における3Dや写真技術の運用については、■マンガ制作を飛躍的に効率的にする3D技術・写真技術■にて詳しく述べます。
また、今年発売されたiPadは、設定をきちんとすればiTunesを利用してアシスタントへの指示作業をするための強力なツールとなります。
iPadはiTunesの同期で現在作業中のコミスタの原稿のサモネールを自動的に取り込めます。iアプリの…ここでは僕が愛用しているAdobe Ideasでの実例ですが、作業中の原稿のサモネールを開き、アシスタント指示記号で指示を入れ左下のメールボタンをクリックしPDFでアシスタントに送信することができます。
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出先や外食をする時のちょっとした時間にもアシスタントに指示することが可能になります。
【デジタル化は制作スタイル自体も自由になる】という事です。
iPhoneやiPadを使うと、例えばスタジオ内に設置したPCやMacをリモートでコントロールできますから、LightWaveのレンダシーンを追加したり外からFAXのチェックをしたりすることができます。
Mac上でアップルリモートディスクトップを起動していれば、アシスタントのクライアントマシンすべてを同時にモニタリングしながら、原稿の進行状況をリアルタイムに把握し指示することもできます。
このように、デジコミは技術と作家性が分離することによってこれまでのような原作や漫画家、アシスタントという作業分担から原作、コンテマン、キャラクターやコスチュームデザイン、デザイン発注、3Dモデリング制作、写真撮影、在宅作業などと細分化しており、ある意味、漫画制作のアニメ現場化というようなものになっています。
つまりアシスタント=漫画家のみならい、もしくは修行中ではなく、アニメで言えば監督がゴールではなく各種の分担でのトップ…撮影監督や作画監督、美術監督、音響監督CGI監督、キャラクターデザイナーのように漫画家とは別の職種となってきています。
デジコミは手描きと違い、ハードやアプリケーションの登場で作業フローをがらりと変貌させます。