■マンガ制作を飛躍的に効率的にする3D技術・写真技術■
「オリジナルの3Dモデルを作る為には3Dモデリングができるソフトが必要になる訳ですが、2D絵しか描いていない漫画家が3Dモデリングを覚えるのはとてもハードルが高いと思われています。
自分は今まで10数年間アニメのセットデザインをLightWaveで作成しており、その際LightWaveを漫画の背景用モデル制作専用にカスタマイズしたものを活用しています。
こちらのカスタムツールは、弊社でLightWave3Dを購入された方に無償でお配りしています。
それを使えば、携帯電話やPC、部屋などの複雑な曲面の少ない工業デザインであれば、2Dの絵が描ける方であれば8時間程度の講座で身につけることができます。
3Dモデリングも、僕がTVや劇場アニメーションで使用しているセットデザイン用にカスタマイズしたLightWaveと専用カリキュラムを使った場合、弊社の講座を受けた漫画家さんは1日〜2日程度の学習時間で使えるようになっています。
早い方だと、勉強してから1ヶ月もしないうちにパチンコのホールを全部モデリングされた方がいらっしゃいます。新台入れ替えが一瞬でできるからいいと言ってましたが。
また面白い事に、弊社でLightWaveを覚えて3Dモデルを作成する方の多くは30代〜50代の女性の漫画家さんです。一般には女性で高齢の方は3Dを覚えるのは難しいと思われがちですが、実は苦手意識をもってがっちりやり込む方の方がきちんと使えるようになっています。
もっとも、3Dモデルを作品中で使ってる場合でも、自分でモデルを作成せずに3Dアーティストに依頼するケースも増えています。デザインごと発注するケースもありますし写真参考などを用意してモデリングのみを依頼するケース、原稿に3Dモデルを配置するケースと様々です。
アニメのセットデザインとデジコミにおける3Dモデルや写真トレスは、実はかなり共通部分があります。ここからは実際の作業の話になります。アニメの場合は設定制作からの仕事依頼、デジコミのほうはアシスタント…ここではデジコミエフェクターと言いますがデジコミエフェクターとしての作業フローとして紹介します。
【デザイン作業】
コンセプトデザインを打ち合わせ
モデルの使用頻度から作業を3種類に別けます。
アニメで言えば文芸なり準備期間に、デジコミであればネームを作家が切ってる間にモデリングを行います。
○ハイポリゴンの3Dモデル=何度も作品に登場するキーアイテム。
数話にまたがって登場するもの。
○ローポリゴンの3Dモデルにレタッチ=ゲストアイテム。
1話だけにしか登場しないようなものやカットごとのカスタマイズが必要なもの。
たとえばスクーターなんかは基本の形のモデルを作ったら配置したあとノリでペン入れしていくほうが良い場合もあるわけです。
○パース定規などで手描き
1コマだけしか使わないものは、3Dモデルをつくる事自体が無駄だったりします。
ただしこの種のものはコンテがあがってない段階で先行作業はできません。
【レンダリング作業】
CG系の映像作品と一番違うのが、3Dのモデルの線をそのままはつかわないことです。
アニメのセットデザインもアニメーターが作画する為の設定画ですから、3Dレンダリングそのままでは納品できません。
LightWave3Dは標準の機能で輪郭太く、中細く、手前太く、奥細くといった線画をレンダリングできますのでそれほどレタッチをやりこむことはありませんが影の部分を太く、光の当たってるところを細い線にレタッチします。
【3Dモデル制作と写真トレス作業の目安について】
○2D描きのほうが向いているもの
写真トレス 町並みなど
町並みは3Dで作ると、時間がかかるだけでなく生活臭などを加味させるのにも膨大な時間がかかります。ロケハンにいけるなら写真トレスが向いています。
写真トレスはバストショットやアップにおいては150cm〜160cm、ロング〜ウェストショットでは110cm前後の高さで水平撮りが基本になります。
モデルを中心に撮影したものとモデルの位置を軸に回転させて撮影したもの。可能であれば俯瞰も撮れるといいでしょう。
○3Dモデル作成のほうが向いてるもの
キャラが持つアイテムや室内背景キャラが持つアイテムはともかくとして、室内背景が向いてるのは重大な理由があります。
被写体までの距離が短いと、画角が強くなりすぎて演出意図とちがった画面になりやすいからです。
実際のTVドラマや映画では、居間などのシーンは実はセットを作り手前の壁を外して撮影しています。
取材ベースで撮影する場合、モデル製作の為の資料写真としては使えますがそのままの素材として使用できません。
被写体とカメラの距離が近くなりすぎて画角が強くキャラが負けてしまう→演出意図と違うレイアウトになってしまうためです。そういう理由から室内は3Dでモデルを作る方が良い訳です。
僕の場合、床の間つき4畳半の部屋のローポリゴンモデルの作成時間はおよそ50分です。
LightWaveで作っておけばComicStudio上で3D空間でぐりぐりと配置できます。」